The light blue room

 

しょうかい。 めも。
ろぐ。 けいじばん。

 


The light blue room

 

2003/1/31

 

 


6時間目


 

しおりの挟んである所から本を開き、記憶を頼りに読んだ所を探る。見覚えのある文章がふと切れたその行から僕はまた本を読み始める。網羅されている漢字と平仮名カタカナの組み合わせ。それを上から順に読み、理解し、想像していく事で僕はまた本の世界へと入っていく。平凡な高校生でしかない僕は本の中で大人にも子供にも男にも女にもなれる。人種も職業も思いのままだ。その中で僕は旅をして仕事をして恋をする。

いつからだったか授業中に本を読むのが当たり前になった。高校二年生。特に夢も希望もない。進学校でもなんでもない学校に通い、将来は家業を継ぐ事になっている、昔から本が好きな少年なのだから授業中に本を読むのは当然といえば当然の事だった。幸い授業は適当にノートさえ執っておけば問題はない。そもそも真面目に授業を受けている人間は全体の10%にも満たない。偏差値の低い学校の授業なんてこんなものである。

本は好きだ。登場人物の誰かに感情移入し、そのままその人物と自分を重ねてしまうのが特に好きなのだ。だから僕は本を何度も読み、その度に違う人物に自分を重ねる。そうした事で本は無限の広がりを見せ、何度読んでも新鮮味を失わず、読み返す度に違った感動を僕に与えてくれる。「小説は三回読め」と言ったのはどこの誰だったか忘れたが僕に言わせれば「小説は登場人物の数だけ読め。」だ。例え大して出てこない脇役でもその人にはその人の役割がありドラマがある。それを読み取り想像する。無意味な人物など作者が書くはずないのだから。

学校に何しに来ているかと聞かれれば、躊躇なく本を読みに、と答える。だからこう、今みたいなLHP、所謂ロングホームルームなんて時間は嫌いで仕方がない。要するに学級会。こればかりは真面目に参加しなければいけないらしい。僕みたいにただ座ってるだけで大した意見も言わない人間が本を読んでても問題ないと思うのだが。しかし正義ぶった―――もしくは良い所見せたがりの―――議長は本を読んでいようものなら名指しで注意してくる。それに怯えてるわけじゃない。ただ自分の意思以外の何か外的要因で本の世界から抜け出される事が不快なだけ。だからこの時間は本を読まないようにしている。

今日の話し合いの内容は文化祭の出し物。お化け屋敷、喫茶店、アイス屋、たこ焼き屋。おざなりの意見しか出ない。発想力の乏しい人間達である。そこで僕も少し思考してみる。文化祭に何をすべきか・・・。映画館、マンガ喫茶、自作ビデオ作成。駄目だ。ろくなものが出ない。僕の発想力も大した事はないようだ。と、そこでふと思いつく。

劇なんかどうだろうか。もちろんただの劇じゃない。歴史的な小説のパロディだ。有名な小説の一部をパロディとして演じる。同時に元になった本の紹介もする。そうする事であまり本を読まない今の高校生たちに本の良さ、面白さを伝え興味を持ってもらう。クラスで協力しないと出来ない、そして文化的にも申し分ない内容ではないだろうか。台本はもちろん小説に詳しい僕が書く。

でも僕はそれを決して手を挙げて発言したりはしない。頭の中で想像しそれで満足する。そうして次の瞬間にはまた別の事を考える。もう文化祭の出し物の事なんか覚えていない。そして僕は机の上の読みかけの小説のページをしおりの場所から開く。注意されるかどうかは、もうあまり気にしていない。

文字を追いながら僕は、また本の世界へと身を委ねていく。

 

〜〜fin〜〜

 

 

 

 


The light blue room

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